オンタリオ州の住居の賃貸につしては 、Residential Tenancies Actという法令の下、テナント(借主)と、ランドロード(貸主)の義務と責任が決められ、そして、Ontario Landlord and Tenant Boadが、それを管理しています。もともとこの法令は、テナントの権利を守る方を優先にされておりますが、今回、Covid 19に関してのオンタリオ州の非常宣告で、テナントの保護として、ランドロードは、テナントが家賃を払えなくても、退去命令を出せないこととなりました。

通常、テナントが、家賃の滞納や、その他、周りの住居人に迷惑をかけるなど正当な理由があれば、Ontario Landlord and Tenant Boardを通して、それなりの手続きを踏み、テナントの退去の強制ができます。

今回の、特別な計らいで、たとえ、テナントが家賃を払わなくても、ランドロードは、テナントを退去させることができなくなったばかりか、この非常令が出る前に、Covid 19とは関係のないケースで、テナント退去の手続きをすでに始めていたケースも、そこでストップすることとなり、今の所、こういった手続きの再開の目処はついていないのが現状です。

もちろん、これは、誰もが住むところが必要で、その権利を優先した、政府の人権面で必要な配慮です。ただ、少数ですが、それを利用して、支払いができるにも関わらず、家賃を払わないテナントも出ているようです。

また、これは、不動産の売買にも影響しています。たとえば、実際にあるケースですが、テナントが住んでいる家を、買主が、自分やその家族が住むため、テナントがクロージング前に退去するのを条件で売買契約しました。契約時には、テナントもクロージング時の退去に同意しました。(買主が住む場合は、法令で、テナントに立ち退きを要請できる)そして、クロージングの日が近づきましたが、このパンデミックで、テナントは一変して、退去するのを拒否しました。こんな場合でも、現在の特別宣告で、テナントに退去を強制できません。したがって、この場合は、ランドロードである、売主は、契約内容にある、テナント退去の条件を満たせなく、契約違反となってしまいます。売主ができる可能性としては、1、売買のクロージング(契約完了日)を延期する。2、いくらか示談金払って、退去してもらう。など、買主、売主、テナントが話し合いをして、解決策を見つけるしかありませんが、難しい問題となっています。

このような問題も実際に起こっていますが、職を失いどうしても家賃を支払えないテナントがいるのも現状です。ランドロードは、まずテナントと話し合い、できる限りお互い納得できる解決策を探すことが大切です。何れにしても、ランドロードはテナントと普段からいい関係を保ち、お互い、必要なコミュニケーションをとることが、大きな損失を防ぐ、一番大切なことだと思います。ランドロードというのは、ビジネスです。それなりの手間暇はかかると最初から覚悟の上、賃貸するのが大切だと思います。