GTA (トロント近郊) では、長期にわたり、いわゆる住宅ブームが続いています。実際、2008年の世界経済不況の折、一時的に不動産価格が下がりましたが、8ヶ月ほどで、住宅の価格は元に戻り、その後、毎年、上昇し続け、ここ数年は、一軒家タイプの家屋では、年間2ケタ台の値上がりも見せています。住宅の値段に関しては、数年前から、毎年「今年は値下がりがおきる」といっている記事が書かれたりしますし、実際、石油価格の下落の影響で、一時、高騰していたアルバータ州の不動産は値下がり状態です。トロントはどうなのかと、住宅価格の方向性は皆さん気になるトピックスかと思います。

そこで、TREB(Toronto Real Estate board)および、CMHC (Canada Mortgage and Housing Cooperation)が報告している最新のレポートをもとに、住宅市場について、今年以降の動向も含めご説明します。

まず、昨年、2015年度の数字ですが、GTAの全ての家屋タイプの平均価格は、$622,116で、前年比 9.8%増でした。また、販売数は、過去の記録を破る、101,230件で、前年比、9.1%増しでした。

市場動向を見る折の重要な要因の一つに、アフォーダビリティーという数値があります。これは、世帯における、収入に対して、家にかかる諸経費である、プロパティータックス、光熱費、住宅ローンの割合を出したもので、住宅の価格妥当性、取得容易性の指針となります。1989年のバブルの折には、この指数が、54%ほどとなっています。その後、1998年ごろにはその指数が、30%以下まで下がり、しばらくそのアフォーダビリティーの低い指数が続きましたが、ここ数年は、家の価格上昇により、その数値も上昇傾向です。2015年から、2016年に掛けては、その数値も40%を超えそうですが、バブルの折の数値には程遠く、まだ、住宅への負担額は、妥当な範囲内であるといえます。

 

GTAの経済状況としては、トロントの現在の失業者数、が7.2%と、引き続き低い数字を保っており、また、フルタイムの雇用も今年に入り、6.2%増しとなっており、比較的安定した経済状態を維持しています。また、不動産住宅市場に影響を与える大きな要因であるモーゲッジの率も、今年中に大きな変化はない見込みです。

不動産市場に与える影響は、様々な要因があるので、今後の市場の予想は、困難な点はありますが、状況を統計的に調査した上での今年、2016年の予想数値として、TREBでは、平均価格655,000ドルから665,000ドル。965,000から105,000件の販売数、CMHCでは、少し保守的な636,500ドルの平均価格、91,000件の販売数と見ています。いづれも、上昇率はスローにはなるが、価格平均値は引き続き増加すると見ています。

実際のところ、2016年の現在において、住宅価格が下落している市も多くある中、トロントと、バンクーバーの2都市の値上がり状況が、カナダ全体の住宅価格推移をプラスにしているのが現状です。